本日9月20日に
市原克也監督の新刊『
勝負馬券論 100万仕事のマグナカルタ(競馬王馬券攻略本シリーズ)』(ガイドワークス)が発売となりました。
私の持論に「負けたときの話を面白く書けるギャンブラーは強い」というものがあります。ギャンブルをやる方ならだいたいわかっていただけると思いますが、勝ったときの話を書いたり話したりするのは本当に簡単。ネット上に転がっているものだけでもうんざりするほどの量になるでしょう。しかし、その逆はググっても意外と見つからないはず。愚痴や言い訳、自慢話への前フリだと判明した時点で途端につまらなくなりますから、技術、経験、覚悟など、さまざまな要素でブラッシュアップしていかなければエンターテインメントとして成立しません。言葉を選ばずに言ってしまえば、勝ったときの話はバカでもできるけど、負けたときの話は頭が良くないとできないのです。
正直なところ、この点は伊吹雅也という競馬評論家に欠けている部分でもあります。もちろん、お仕事が途絶えない程度には競馬やギャンブルのことを知っているつもりですし、飲み屋や『リアル競馬王』においてはむしろ好んで負けたときの話をしていますけど、これを文字媒体のエンターテインメントとして成立させられるかと言うとまた話が別。いや、やればそれなりにできるのですが、会話の中で行うよりもさらに一段ハードルが上がるうえ、この部分に関しては私よりも優秀な方をたくさん知っている分、嫌でも謙虚にならざるを得ません。
そして、私が“負けたときの話を面白く書けるギャンブラー”と認識している方たちは、たいてい“強いギャンブラー”でもあるのです。単純に生涯の収支や予想成績がプラスという方はもちろん、ここぞというタイミングで大勝する方、何度どん底に突き落とされても必ず這い上がってくる方、ギャンブルを媒介にして華々しい人生を送っている方など、“強さ”の質は人それぞれ。しかし、どれも凡百のギャンブラーが憧れる存在であることに異論はないでしょう。
私は編集部のご厚意によりひと足早く読み終えたわけですが、本書は“強いギャンブラー”になるための教科書としてうってつけの一冊だと思います。対談に登場されている吉冨隆安氏や双馬毅氏はもちろん、著者である市原克也監督も、負けたときの話が本当に面白いんですよね。もちろん、それをどうギャンブラーとしての“強さ”に繋げたかも、自然な流れの中で語られていました。負けたときの話をエンターテインメントとして楽しんでいるうちに、意識せずとも“強いギャンブラー”としての心構えが身につくわけですから、教材としては申し分ありません。
市原克也監督の一ファンとして、だいぶ前から本書のリリースを楽しみにしておりましたが、期待をはるかに上回る素晴らしい一冊です。すべての競馬ファン……とは言わないまでも、競馬ファンの何パーセントかが本書に目を通したら、馬券というギャンブルはもっともっと面白くなるはず。そんな日が来ることを願いつつ、まずは私が第一陣として“強いギャンブラー”に成長していきたいと思います。
